理科専科が見方・考え方を解説! 〜『条件制御』とは〜

問題解決能力/見方・考え方

初めに

 これまで「比べる」「関係づける」という見方・考え方について紹介をしました。まだ読まれていない方は、先に「理科専科が見方・考え方を解説! 〜『比べる』とは〜」「理科専科が見方・考え方を解説! 〜『関係付ける』とは〜」を御覧ください。

 今回、扱うのは「条件制御」です。この見方・考え方は、具体的にどういったものなのでしょうか?また、「条件制御」という見方・考え方はなぜ必要なのでしょうか?ということで、今回は「条件制御」という見方・考え方について学んでいきたいと思います。

「条件制御」って学習指導要領には…

 まず、学習指導要領で「条件制御」について確認してみましょう。学習指導要領には…

 「条件を制御する」とは,自然の事物・現象に影響を与えると考えられる要因について,どの要因が影響を与えるかを調べる際に,変化させる要因と変化させない要因を区別するということである。具体的には,解決したい問題について,解決の方法を発想する際に,制御すべき要因と制御しない要因を区別しながら計画的に観察,実験などを行うことが考えられる。

【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説

第5学年では,主に予想や仮説を基に,解決の方法を発想するといった問題解決の力の育成を目指している。この力を育成するためには,自然の事物・現象に影響を与えると考える要因を予想し,どの要因が影響を与えるかを調べる際に,これらの条件を制御するといった考え方を用いることが大切である。

【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説

と書かれています。

 つまり、一言でいえば、「条件制御とは、自分が立てた仮説が正しいかどうかを確かめるための実験方法を発想するときに必要な見方・考え方」だと言えます。

 3年で「比較」という見方・考え方を使って疑問を見つけ、4年で「関係づけ」という見方・考え方を使って根拠のある予想を立てます。ただし、予想はあくまでも予想であり、実験をしてたしかめるしかありません。そこで5年では、「真実がどうなのかを確かめるための実験方法を考えられるようになりましょう」ということになるんだと思います。

 この条件制御という見方・考え方で特に重要となるのは、「制御すべき要因と制御しない要因を区別しながら」というところになるとおもいます。

「制御すべき要因と制御しない要因を区別しながら」って具体的には?

 では、「制御すべき要因と制御しない要因を区別しながら」とは一体どういうことなのでしょうか?第5学年の「植物の発芽と成長」という単元を例に上げながら、確認していきましょう。

 ぼん先生だったら、この単元の導入で「袋の中にある種」と「発芽している種」を比較させます。そして、「袋の中の種は長いこと待っていても発芽しないんだよね」と伝えると、「なんで芽が出てこないんだろう?」「どうして畑にまくと出てくるんだろう?」「発芽するために必要なものはなんだろう?」などといろいろな疑問が出てきます。

 その後、子どもたちは、植物を育てた経験と関係づけながら、発芽するために必要なものを予想します。たとえば、「水」「土」「日光」「温かさ」「肥料」「空気」などです。その後、「じゃあ、少なくともこれは必要だと思うのはどれ?」と聞くと、たいてい「水は必要」といいます。そこで、「まずは水が発芽に必要かどうかを実験して確かめよう」と言い、実験を行います。

 この時、制御しない要因は「水」であり、制御すべき要因は「土の有無」「日光の有無」「肥料の有無」などになります。小学生にも伝わるような言い方をすると「制御しない要因とは調べたい条件のことであり、制御すべき要因は他の条件」ということになります。だから・・・

といったように①も②も「水(調べたい条件)は変えて、土・空気・温かさ・脱脂綿(他の条件)は同じになっている」ので正しく実験方法が立てられているということになります。

 その後、実験してみるとAは発芽し、Bは発芽しないという結果になったとしましょう。その場合、「他の条件は一緒なのに、水の条件だけ変えると結果に違いが出た。このことから、水は発芽に必要だ」と考えられるということになります。つまり、「ある条件だけ(水)を変えたら、結果に違いが出た(発芽の有無)。ということは、その結果の違いを引き起こしているのは、その条件だ」っていうふうに考えているわけです。

『条件制御』の必要性とは?

 では、条件制御はどうして必要なのでしょうか?

 たとえば、「制御すべき要因と制御しない要因を区別しながら」といったことをせず、こんなふうな実験をしたとしましょう。

 そして、Cは発芽し、Dは発芽しなかったとします。この場合、Cが発芽した理由は2パターンでてきてしまいます。それは、「水があったから、発芽した」というパターンと「脱脂綿があったから、発芽した」というパターンです。これは、制御しない要因が2つあるため、その結果を引き起こしているのがどっちの要因なのかわからないから特定できないということになります。

 つまり、「一気に条件を複数かえるとどの条件がその結果を引き起こしたのかわからないから、1個ずつしか確かめることができない。だから、調べたい条件は変えて、他の条件は同じにするという条件制御の考え方が実験方法を立てるうえで必要である」ということになります。

終わりに

 ということで、今日は「条件制御」について行いました。条件制御の本質は、「調べたい条件は変えて、他の条件は同じにする」だと思います。

 実は大学生も研究者も実験方法を立てる時、このような条件制御の考え方を用いて行います。つまり、この実験方法の立て方は、1度身についてしまえばどんなときにも応用できるということです。

 もしかしたら、今回の記事をみて、「条件制御なんとなくわかったけど、小学生におしえるのは難しいな」と思われた方もおられるかもしれません。そんなときは、5年の授業案を見てみて、具体的にぼん先生はどう教えているのかを確認して見ください。特に1学期のやつは、丁寧におしえているので参考になると思います。2学期後半くらいになるとテンポよく条件制御の考え方を使えるようになっているのできっと大丈夫ですよ!

コメント

タイトルとURLをコピーしました