理科専科が授業開きで大事にしていることは?
前回は、理科専科が授業開きで何を大事にしているのかについて説明しました。まだ読んでない方は、先に「理科専科はどう考える?! 〜理科の授業開き〜」をご覧ください!
しかしながら、読まれた方の中には、「それって具体的にはどんな授業なの?」って思われた方もいるかと思います。そのため、今回は、理科専科は4年生の授業開きをどうしているのかについて紹介したいと思います。
4年生でつけたい問題解決能力は?
まず、4年生で身につけたい問題解決能力を確認しましょう。学習指導要領では…
【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説第4学年では,主に既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説を発想するといった問題解決の力の育成を目指している。この力を育成するためには,自然の事物・現象同士を関係付けたり,自然の事物・現象と既習の内容や生活経験と関係付けたりすることが大切である。
と明記されています。これは、どういうことかっていうと…
例えば、「晴れの日の気温のグラフはどっちだと思う?」と尋ねたとします。そして、子どもたちが「①!」と答えたとしましょう。その後、「どうして?」と聞いてみると、Aさんは「なんとなく」と答えました。Bさんは「外で遊んでいて、晴れの日の昼って暑いなって感じたことがあるから、①だと思いました」と答えたとしましょう。みなさんは、どっちの子が問題解決能力が高いと思いますか?間違いなくBさんですよね。だって、根拠が明確であり、理由に説得力があるからです。つまり、こんな力をつけましょうねってことだと思います。
東京書籍は、4年生の授業開きをどうしている?
では、東京書籍では4年生の授業開きをどうしているのでしょうか?
東京書籍の1ページ目を開いてみると、普通のコップと水のついたコップがならべられていて、「コップがあせをかいている?」という言葉がついています。おそらく「結露」をテーマにして、授業開きをさせたいのでしょう。みなさんは、この授業開きをどう思いますか?
私は、「まあまあかな」と思います。このテーマを使えば、問題解決の途中までは行けるし、子どもに理由も想起させられそうなので、自分が授業開きでさせたいことはできるかなという印象です。しかしながら、「水蒸気が冷やされると水にもどる」という勉強は4年生の2学期でやるので、ネタが被ってしまのは減点かなと思います。そのため、どうせこの後やるし、このネタは後に取っておいたほうがいいという判断のもと、自分はやりませんでした。
じゃあ、自分はどんな授業開きをしたのか紹介します。
理科とはどんな教科を確認する
挨拶をした後、『理科ってどんな教科?』と尋ねます。「実験する教科」「外に行く教科」「楽しい教科」など色んな意見が出ます。でも、自分は「全然違います」とはっきり伝えました。そして、理科とは「不思議を自分の手で真実に変える教科」と板書しました。ここで、はっきり「全然違います」と言ったのは、子どもたちに問題解決をするのがゴールであるということをしっかり意識づけしたいからです。
問題をつかみ、予想させる
みんながノートを書き終えた後、『全員集合』と言って、みんなを集めて、静かにペットボトル(水入り)ときりを出しました。そして、「このあと、きりで穴をあけます。水はどうなりますか?ノートに書きましょう」と伝えました。
この時、人によって反応はバラバラです。「こんなん簡単やん!」「多分分かったけど…」「分かったけど、これを問題に出すってことは違うのかな?」といった感じです。
そして、自分の考えだけを発表させました。この時、ペットボトルのイラストを書いておき、そのイラストを使いながら自分の考えを説明させました。絵が合ったほうが理解が早いからです。出てきた意見は…
水は全部出る
水は穴のところまでは出る
水は出ない(きりをさした瞬間にちょっとは出るけど)
でした。
【重要】自分の考えの理由を聞く
そして、『人数が少ない意見から当てていくね!』と言いました。『「水は出ない」の人は立ちましょう」と言い、『この中で、理由がある人は立っていてください。理由がない人は座ってください』と言います。すると、「多くの子が座ります」そして、「Aさんはすごいね!実は、4年生の理科では、自分の考えの理由を説明できる力をつけていくんだよ。もうこの時点でできるなんてすごいね」と褒めます。
そして、Aさんに理由を話させました。「3年生の時に、風が車を押して動いたから、穴があいても、風が水を押して、止まると思ったからです」と言っていました。これも褒めどころです。『すごいな、Aさん。Aさんは、3年生で勉強したこととつなげて考えたんだね。』と価値づけしました。
その後、『「水は全部出る」の人は立ちましょう」と言い、『この中で、理由がある人は立っていてください。理由がない人は座ってください』と言います。すると、さっきよりも増えます。Aさんに負けられないという思いがあるからです。そして、「お〜、さっきよりも立っている人が多いね!すごい」と褒めます。
Bさんに理由を尋ねると、「自分は、水を袋に入れたら、その袋に穴が空いていて、水が出た経験があるからです」と答えてくれました。これも褒めどころです。「すごい。Bさんは、日常生活の経験とつなげて考えたんだね」と価値づけします。
そして、『「水は穴のところまでは出る」の人は立ちましょう」と言い、『この中で、理由がある人は立っていてください。理由がない人は座ってください』と言います。すると、さっきよりも増えます。ここも褒めどころです。
Cさんに理由を尋ねると、「水の重さで水が押し出されて、あなから水が出てくると思うんだけど、穴を過ぎたら押せないから出てこないと思う」と答えていました。これはどっちかわかりにくかったので、「確かに!」と大きめなリアクションを取って、その子の考えに最大の賛辞を送りました。
そして、『この中で意見を変えたい人はいる?」と聞きました。すると多くの子が「水は穴のところまでは出る」に流れました。
実験する
その後、『じゃあ、実験して確かめてみようか。集合』と言います。それで、実験しようとすると、「先生、バケツがないと水浸しになるよ」という声!これも褒めどころですね。そして、準備をさせた後、「3!2!1!」といって、ブスッとさしました。そして、きりを抜きました。
すると、「水は…出ない」のです。これには、子どもたちも「なんで?」という声。これは、イメージと現象を比べて、その違いによって生まれた問いですね。詳しくは、「理科専科が見方・考え方を解説! 〜『比べる』とは〜」をごらんください。
そして、「何がなんでなの?」と問うと、「あなが開いているのに、水がでないのはなぜ?」という声!これも褒めどころです!
そして、「穴が空いているのに、水がでないのはなぜ?」という課題を黒板に書きました。もちろん、子どもたちにもノートに書かせました。子どもは興味津々です。
4年生でつけたい力を確認する
全員がノートを書いたのを確認してから、『時間なので、ここまで!』と言うと「え〜」という声!そして、次のようなやり取りをしました。
T でも、これってすごく不思議でしょ。それを自分の手で解決するのが理科っていう教科だよ。でも、残念ながら、この疑問は君たちには難しいからこれ以上はやらないよ。もし解決したいなら、理科の力をつけていこうね。それでね!4年生でつけたい力は何か?って言うと
C 理由を説明する力
T そうだよ。でも君たちは、すぐにできるとおもう。だって今日も学んだこととつなげたり、生活経験とつなげたりして予想を言えてたから。今日言えなかった人も大丈夫!一緒に勉強していけば、すぐにできるようになるよ。だからいっしょにがんばろうね。
そして、振り返りをさせて、終わりました。
終わりに
どうでしたか? 子どもたち、すごく楽しそうじゃないですか?じゃあ、何故楽しそうなのかと言うと…
褒めながら進めたから
問題解決を子どもたちにさせたから
だと思います。
こうすれば、子どもたちは、「理科って楽しそう」って思うんだろうし、「どんどんやりたい!」ってなると思います。
他の授業開きシリーズについて気になる方は、「理科専科はどう考える?! 〜理科の授業開き〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜3生編〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜5生編〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜6年生編〜」を御覧ください。
また、ぼん先生がこのブログを通して実現したいことをまとめました。気になる方は、ぼん先生のやりたいこと 〜自己紹介〜をご覧ください。
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