理科専科が授業開きで大事にしていることは?
前回は、理科専科が授業開きで何を大事にしているのかについて説明しました。まだ読んでない方は、先に「理科専科はどう考える?! 〜理科の授業開き〜」をご覧ください!
しかしながら、読まれた方の中には、「それって具体的にはどんな授業なん?」って思った方もおられるかと思います。そのため、今回は、6年の授業開きを理科専科はどうしているのかについて紹介したいと思います。
6年生でつけたい問題解決能力は?
まず、6年生で身につけたい問題解決能力を確認しましょう。学習指導要領では…
第6学年では,主により妥当な考えをつくりだすといった問題解決の力の育成を目指している。より妥当な考えをつくりだすとは,自分が既にもっ ている考えを検討し,より科学的なものに変容させることである。この力を育成するためには,自然の事物・現象を多面的に考えることが大切である。
【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説
と明記されています。
つまり、6年生では、妥当な考えをつくりだす力を身につけたいということになります。科学者は、いろいろな実験結果をもとに、真実を探求していきます。昔は正しいと思われたことも、科学の発展とともに今では正しくないと分かったこともたくさんあります。そのため、実験の結果から自分がどんな答えを導き出すのかって理科ではとても大事なことだと思います。そして、その根拠となる結果が複数あれば、自分の考えの妥当性は増していきます(=多面的に考える)。そんな力を6年生ではつけていきたいのだと自分は思います。そして、その力が一番発揮されるのが、結果から考察を導き出す時だと自分は思います。
東京書籍は、6年生の授業開きをどうしている?
では、東京書籍では6年生の授業開きをどうしているのでしょうか?
東京書籍の1ページを開いてみると、街のイラストと「つながりをみつけよう」という言葉がかかれています。おそらく私達の身近なところには、普段は意識していないけど色々な不思議が隠れているよっていうのを伝えるのが目的なのかなと自分は思います。みなさんは、この授業開きをどう思いますか?
私は、「うーん」と思います。理由は、「問題解決ができないから」です。理科って問題解決が楽しい教科なのに、1発目に問題解決をさせないのは、自分の中ではありえません。イラストで話し合いをさせるのではなくて、生の体験をさせるべきです。じゃあ、自分はどんな授業開きをしたのか紹介します。
理科とはどんな教科を確認する
挨拶をした後、『理科ってどんな教科?』と尋ねました。子どもたちからは色んな意見が出ました。しかしながら、それらの意見に対して、「全然違います」とはっきり伝えて、理科とは「不思議を自分の手で真実に変える教科」と板書しました。
ここで、はっきり「全然違います」と言ったのは、子どもたちに問題解決をするのがゴールであるということを意識づけしたかったからです。
問題を掴む
みんながノートを書き終えた後、黒板に「AとBのどっちが塩水のコップでしょう?」という問題を板書しました。そして、全員を集めて説明しました。
「ここにAとBのコップがあります。どっちかは水で、どっちかは塩水です。今から、チームで協力して、30分で当ててください。理科室にあるものは、先生に許可を取れば何でも使って構いません。ただし1つだけルールがあって、飲むのは禁止です。質問はありますか?」と伝えました。子どもたちからは、「ありません」との声!そこで、「始めてください」と伝えました。
実は、この問題はシンプルなようで、調べ方がいくつもある良い問題なんです。ちなみに、みなさんは何個思いつきますか?僕の尊敬している先生のクラスの子は、合っているのも間違っているのも含めて23個思いつきました。こんだけ思いつくのはすごいことです。自分の受け持っている子は、マックスでも5種類くらいでした。
実験中に教師がやること
さて、30分間は、子どもに託したので、基本的には、教師は何もしません。最悪、答えが出せないグループがいても、仕方がないかなと思っています。初めから完ぺきにできたら、教師なんて必要ないですからね笑もっと言えば、自分がこの1時間でやりたいのは、答えを出すことではなく、6年でつけたい問題解決能力を実感させることと理科って楽しいって思いにさせることですから。
でも、全く何もしないわけではありません。大きく分けて、4つのことはちゃんとやります。
①実験器具の場所を教えたり、「使っていいよ」と許可を出すこと
②安全な実験ができているのかを見ること
③答えがわかった子に、1つの実験から答えをだすのではなく、複数の実験から答えを出すのが素敵だよって伝えること
④20分が経ったら、結果と自分の考えの書き方を教えること
です。特に3番が大事かなと思います。早いグループは、すぐに答えが分かることもあります。そんな時に、どんな声掛けをするのかって大事だと思います。自分だったら、「3つの結果から考察を書いた子を見たことがあります。君たちなら、超えれるかもしれないから頑張ってみて」っていうふうに言うかなと思います。これでやる気にならない子はいません。
結果を共有し、考察する
「さあ、時間切れ!」と言って、実験を止めました。そして、実験方法とどんな結果が出たのかを発表してもらいました。
1グループ…蒸発させると、Aに白いものが出てきた
2グループ…キャップを浮かせると、AもBも浮いた。他の道具でも確かめようとしたが、時間切れになった。
3グループ…塩を入れてみると、Aは溶け残りが出た
4グループ…蒸発させると、Aに白いものが出てきた
という意見が出ました。
そして、これらの結果を共有した後に、「この結果からどんな事が言えるかな?」と言って、考察を書かせました。もちろん、多くの子は、「Aが塩水である」と書いて持ってきていました。
6年生でつけたい力を共有する
そして、その後に、教師の方から、このように伝えました。
すごいね。君たちは、塩水がどっちかを実験でちゃんと当てることができたね。しかも3種類の実験が出ているのがすごい。2グループの実験方法も今回は時間が足りなかったみたいだけど、きっともう少し時間があればうまくいくよ。実は、6年生でつけたいのは、みんながなっとくするような答えを出すことなんだよ。みんなが納得するためには、根拠がいくつもあるといいよね。6年生は、色々な実験を根拠にして、みんなが納得するような答えを出す力をつけていこうね
と伝えました。
その後、「ちなみに、今から配るのは先生がすごいなと思った子の考察だよ」といって、全員に配りました。その子はこのように書いていました。
Aを蒸発させた結果、Aから白いものが出ていた。また、AとBの体積を同じにして重さをはかるとAのほうが重かった。さらに、Aに塩を入れても溶け残りがすぐに出てしまった。このことから、Aが塩水であると考えられる。
「どう?」と聞くと、「根拠がたくさんあるからすごい」と言っていました。そして、振り返りをして終わりました。
終わりに
やっぱり、どれだけ「妥当な考えをつくりだす力をつけるよ」って口で言っても、子どもには伝わらないと思います。経験と言葉をつなげることで、人は「わかった!」ってなるんだと自分は思います。今回で言えば、「3つの実験からAが塩水である」と結論付けたことが、「妥当な考えを作り出す力なんだよ」って実験を通して教えたかったんです。そして、欲張りなぼん先生は、こんな考察がかけるようになってほしいということで、お手本となる考察も見せたわけです。でも、この授業で、全員が目指すべき場所を理解できたと思います。「問題解決をとおして、つけたい力を理解させる」っていうスタイルが自分は一番の近道だと思っています。
他の授業開きシリーズについて気になる方は、「理科専科はどう考える?! 〜理科の授業開き〜」「理科専科はどう考える?! 〜理科の授業開き〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜3生編〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜4生編〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜5生編〜」を御覧ください。
また、ぼん先生がこのブログを通して実現したいことをまとめました。気になる方は、ぼん先生のやりたいこと 〜自己紹介〜をご覧ください。
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