理科専科が授業開きで大事にしていることは?
前回は、理科専科が授業開きで何を大事にしているのかについて説明しました。まだ読んでない方は、先に「理科専科はどう考える?! 〜理科の授業開き〜」をご覧ください。
しかしながら、読まれた方の中には、「それって具体的にはどんな授業なん?」って思った方もおられるかと思います。そのため、今回は、3年の授業開きを理科専科はどうしているのかについて紹介したいと思います。
3年生でつけたい問題解決能力は?
まず、3年生で身につけたい問題解決能力を確認しましょう。学習指導要領では…
第3学年では,主に差異点や共通点を基に,問題を見いだすといった問題解決の力の育成を目指している。この力を育成するためには,複数の自然の事物・現 象を比較し,その差異点や共通点を捉えることが大切である。
【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説
と明記されています。
これは、どういうことかというと…
例えば、見た目が全く同じ車(電池の向きだけ反対)を2台走らせるとします。おそらく子どもたちは「見た目が同じだし、どっちも前にすすむはずだろう」と思うはずです。実際に走らせてみると、2台の車は別々の動き(1台は前に進み、もう1台は後ろに進む)をします。すると、子どもは「どうして見た目が同じなのに、走る向きはバラバラなのか」といった疑問をもつと思います。これは、2つの車の動きを比べたり、自分のイメージと自然現象を比べたりすることで疑問をもったわけです。この辺について詳しく知りたい方は、「 理科専科が見方・考え方を解説! 〜『比べる』とは〜」を御覧ください。
このように、自然現象を見て、疑問を自分で見いだすことができるようにしたいのが3年生ということです。問題解決は、疑問がないと始まらないので、とても大事な力だと思っています。
東京書籍は、3年生の授業開きをどうしている?
では、東京書籍では3年生の授業開きをどうしているのでしょうか?
今年度から教科書は変わりますが、昨年度は、オナモミが服についている写真と「なんで」という文字がかいてあります。おそらく「どうしてオナモミは服につくのかな?」という疑問を引き出したいのだとおもいます。みなさんは、この授業開きをどう思いますか?
私は、「うーん」と思います。理由は、「オナモミを準備するのが難しいから」です。オナモミは、秋に緑色の実をつけます。そのため、4月には実はなかなか手に入りません。1発目の理科は、やっぱりいろんな物を触らせてあげたいって思っています。悩んだ結果、自分はオナモミを使わずに授業開きをすることにしました。じゃあ、3年生の授業開きをどうしたのかについて紹介します。
理科とはどんな教科を確認する
挨拶をした後、『理科って初めてだよね。じゃあ、今から理科ってどんな教科なのかを黒板に書くからそっくりそのまま写してね』と伝えました。そして、理科とは「不思議を自分の手で真実に変える教科」と板書しました。
問題をつかみ、予想させる
みんながノートを書き終えた後、『全員集合』と言って、みんなを集めて、静かにペットボトル(水入り)ときりを出しました。そして、「このあと、きりで穴をあけます。水はどうなりますか?ノートに書きましょう」と伝えました。
そして、予想を書かせ、発表をさせました。この時、黒板にイラストを書いておき、イラストを使いながら説明をさせました。出てきた意見は…
水は穴のところまでは出る
でした。
そこで、「理由ある人っている?」と尋ねると数人が手を挙げました。褒めどころですね。そして、Aさんを当てました。Aさんは、「自分は水は穴のところまで出ると思います。理由は、穴が空いてたらそこから水が流れると思うからです」と答えました。すると「同じです」との声。
実験する
その後、『じゃあ、実験して確かめてみようか。集合』と言いました。たまたまBさんが近かったので、「Bさんバケツも持ってきて」と言いましたそして、準備をさせた後、「3!2!1!」といって、ブスッとさしました。そして、きりを抜きました。
すると、なんと、「水は…出ない」のです。これには、子どもたちはびっくりした表情です。
【重要】問いを見出させる
この後が、教師の出場です。
「理科は、疑問を自分の手で真実に変える教科です。逆を言えば、疑問がなければ、始まりません。そのため、3年生では、疑問を見つける力をつけていきます。今、この実験を見て、疑問に思ったことはありますか?それをノートにかいてみてください」
と指示を出しました。この時、机間巡視をしながら『Cくんは、〇〇したらどうなるんだろう?」ってかいてたよ』って声かけをしました。そして、全員で疑問に思ったことを共有しました。
- 穴が空いているのに、水が出ないのはどうして?
- 穴の大きさを大きくしても、水って出ないの?
- 穴の数を増やしても、水って出ないの?
- キャップを開けてみたらどうなるの?
- ペットボトルの底にさしても水は出ないの?
などです。めちゃくちゃ褒めどころですね。子どもたちは、自分の想定を超えてくるような疑問を出すこともあります。それがおもしろいんですよね。
この後の進め方は、2つあります。
A … 一番疑問なのはどれ?→課題として書く→時間なのでここまで→教師の話
B … 一番の疑問なのはどれ?→やってみる→時間なのでここまで→教師の話
です。これは、残り時間との兼ね合いで決めればいいかなと思います。教師の話としては…
「君たちが見つけた疑問を見ていて、本当にすごいと思った。良い疑問だね。こんな風に君たちは疑問を見つける力をつけていこう。そのコツはこれからの理科で学んでいこう」
といったことを言うと思います。最後、振り返りをして挨拶をしましたが、とっても良い顔をしていましたね。
終わりに
どうでしたか?子どもたち、すごく楽しそうじゃないですか?じゃあ、何故楽しそうなのかと言うと、問題解決を子どもたちにさせたからだと思います。こうすれば、もう子どもたちは、理科楽しそうって思うんだろうし、どんどんやりたい!ってなると思います。
また、4年生や5年生の授業開きを見た方は分かると思いますが、ペットボトルと水といった同じ教材を使っていても、つけたい力が違えば展開はガラッと変わります。授業開きで大事にしていることが達成すれば、同じ教材を使っても良いのではないかなと思います。そのほうが新学期のバタバタしているときも準備が楽ですし。
他の授業開きシリーズについて気になる方は、「理科専科はどう考える?! 〜理科の授業開き〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜4生編〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜5生編〜」「理科専科は、授業開きってどうするの?! 〜6年生編〜」を御覧ください。
また、ぼん先生がこのブログを通して実現したいことをまとめました。気になる方は、ぼん先生のやりたいこと 〜自己紹介〜をご覧ください。さらに、疑問を見つけるコツについては、「 理科専科が見方・考え方を解説! 〜『比べる』とは〜」を御覧ください。
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